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身体の使い方を習得する

伊東猛です。

US Open Tennis 2020 もいよいよ2週目に入り、特に男子では若手選手の活躍やジョコビッチの失格などで誰が優勝するか分からない非常に面白い展開になってきました。今年に入り25連勝無敗でとんでもない強さを見せつけていたジョコビッチでしたが、故意なのかそうでないのか分からない行動で失格・・・。圧倒的な強さを見せつけての優勝が見たかったですが、次までお預けです。

話は変わりアメリカ大学の情報ですが、9月からの新学期開始に向けて世界中からテニス選手がそれぞれの大学に戻っていますが、テニスチーム内でコロナ陽性者が続々出始めているようで、寮に閉じ込められて隔離されている話が出てきました。やはり人が集まると当然のことながら感染が拡がるということだと思いますので、感染しないことを考えるのであればなかなか動くべきではないのでしょう。

私がコーチをしているジュニア、また直接ではないですが、間接的に関わっている選手たちが海外の大会への遠征を心待ちにしているのですが、現時点では GO サインを出せていません。ATP と WTA ツアーが再開され、ヨーロッパでは ITF の大会も始まりましたが、帰国後2週間の隔離を考えるとなかなか遠征という選択をするメリットがないように感じており、それであればじっくり「プレーの幅を拡げる」、「テクニックを磨く」、「身体の使い方を習得する」、ということに時間を使う方が、大会が始まり遠征を開始できるタイミングが来た時に、選手にとっては 「+」 がより多いだろうと現時点では考えています。

というわけで、ここ最近では特に「身体の使い方を習得する」ということに少しフォーカスして、選手にコーチングをしており、それをうまく伝えることができた選手 / うまく伝わった選手からのフィードバックは非常に良く、実際にプレーを見ていても無駄な力を使わずかなり鋭いボールを飛ばし、また無駄な動きが少ないのでショットも安定してきます。身体の使い方に関する調べものをしていた際に「武術における身体の使い方」の一つを見つけたところから、これまでに調べたことのある野球やゴルフでのスウィングの理論との繋がりを見出すことができ、テニスでボールを打つ際の感覚に一旦上手く落とし込めてきたと感じています。

いろいろな考え方があるので一概には言えないですが、一般的には常識とされているようなことが調べてみるとあまり正しい考え方とは言えなかったりすることも多いので、ジュニアのプログラムを考える上で多くの情報を収集し、しっかりとした根拠のもと練習内容やトレーニング内容を構築することが必要だと改めて感じます。

今回から数回に渡り、私がコーチをしているエリートチームの練習について、どのような考えでプログラムを構築し、練習を行っているかを書き、まとめてみたいと思います。


エリートチームの練習

ジョコビッチとシェルビン・ジャファリアウの2人のライブ配信は「自分を極めるプロジェクト」と題され、2人でこれまで歩んできた道のりを説明しています。エリートチームでは週4回、18時から20時40分までの2時間40分の練習を行っています。ビルの4階にあるインドアコートが拠点ですが屋根が非常に高く、ロブも使うことも普通にできます。雨が多い日本では、練習拠点がインドアコートであるメリットは計り知れないと考えています。2面で16人の選手が練習しており、またコートサーフェスもかなりボールスピードが速い表面がツルツルであるハードコートであるため、それらを考慮し工夫を重ねてきた結果、今の少しユニークな練習方法になっています。時間の配分としては現時点ではアップとボール出し、サーブ練習、フットワーク系のドリルに最初の1時間15分ほどを充て、そこからストローク︎+ボレーを使った半面でのポイント練習を40分、全面を使ってのサーブからのシングルスポイント練習を30分、そして最後に5分ほど簡単なトレーニングで練習を終えます。全体的にポイント練習が多く、競い合いの中で強くなっていくことを狙いの一つとしていますが、目の前の勝負に執着し過ぎると先を見据えたチャレンジが少なくなることが予想されるので、そこの調整をしていくことが常に課題と考えています。

ここからは練習の中身の一つ一つをセクション毎で区切り、それぞれの狙いと課題をあげてみます。













ウォームアップ

練習の最初の10分弱を動く準備をするためのアップに使っています。これまで、アップの仕方は何度も変わってきていますが、ここ数ヶ月はずっと下記のイラストで紹介しているダイナミックウォームアップを行ってきています。USTA(アメリカテニス協会)の資料を参考にし、ジョコビッチなどのウォームアップをしている動画も確認した上でこのメニューを採用。それに加えて3分ほどのダイナミックストレッチを行いボールを打つ練習に入ります。ただ常に新しいアイデアを取り込んでいるので、同じような動作でも意識することを変えてみたりしながら、自然と体に新しい感覚が出生まれることを目指しています。この10分弱のウォームアップをしっかり取り組むと、かなり汗もかきコートで動くための準備は整うと感じます。ただ、一つ一つの動作の意味をしっかり認識できておらず適当にこなしている選手もいるので、目的認識と方法の徹底がまだまだ必要です。このウォームアップを日々重ねることにより関節の可動域を拡げていくことが可能だと考えており、このたった10分弱の取り組みがパフォーマンスへの大きな影響をもたらす可能性の認識を選手に伝えています。


ウォームアップの基礎となっているダイナミックウォームアップメニュー。このメニューをより脱力を意識し、効果的に力を発揮する動きの習得に向けた内容に常にアップデート中です

ボール出し / サーブ練習

動くために必要なウォームアップが終わると次はボール出し / サーブ練習です。ボール出しのドリルとしては、以下の5つのドリルを現時点では主に行っています。

①手出しでのグラウンドストロークの練習

②手出しでのサイドに動かされた時の処理の練習


③ショートボールのアタック練習

④深いボールと浅いボール出しでの守備と攻撃の練習

⑤浅いボールをアタックしネットダッシュからのボレー


この中の①手出しでのグラウンドストロークの練習では、「勢いのないボールに力を伝えて打つことを身につけること」「あまり動きがない中でテクニックの習得・修正を行うこと」「狙ったところにきっちり打てる能力を身につけること」ということに重点をおいています。この練習の意図には、以下のようなものがあり、単純作業の繰り返しの中で動きをどこまで自動化していけるかが重要だと感じています。

  • 相手のボールの勢いを上手く使いボールをコントロールすることも重要だが、自分からしっかりボールに勢いを伝えることができるようになることも凄く重要。ボールを打ち抜けるようになること

  • より楽にボールに力が伝わる身体の使い方、ラケットの振り方などを試しながら、技術習得することに挑戦すること

  • 常にターゲットとなるゾーンを作り、そこを狙ってボールを打ち続けることでのコントロールの精度アプを図る

②手出しでのサイドに動かされた時の処理の練習では、「動かされた状態でバランスを崩さずに打ち抜くこと」「動かされた状態でのディフェンスショットにおいてのコントロール精度を上げること」「打つ際 / 打った後の切り返し動作を素早くし必要なポジションへ戻るスピードを上げること」ということに重点を置いています。この練習には以下のような意図があり、かなりハードな動きでストレスがかかる状態での身体とボールのコントロールを身につけることが目的です。

  • サイドにかなり動かされた状態でボールに追いついた時にバランスを崩さず、ボールに威力を伝えるための足捌きを習得すること

  • ディフェンスをする際に、相手に連続攻撃を許さないように深いボールを精度良く打てるようにすること

  • 打つ際/打った後にセンターヘ向かっての鋭い動き出しを行えるよう、脱力した状態での足捌きを覚えていくこと

③ショートボールのアタック練習では、「出来るだけネットに近い場所で早いタイミングでボールを打ち、相手から時間を奪うこと」「サイドライン近くへボールをコントロールする能力を身につけること」ということに重点を置いています。この練習では浅く浮いたボールをただ強く叩こうとしがちになりますが、ボールをコントロールし狙ったところへ確実に打っていくことをより重要視し、以下のようなことを無意識でできるようにすることを目指します。

  • チャンスボールという意識で強いボールを打ちにいくのではなく、あくまでも早いタイミングで相手コートにボールを打っていく

  • パワーではなく、タイミングとコントロールで勝負する

④深いボールと浅いボール出しでの守備と攻撃の練習では、「深いボールに対しポジションを素早く下げる動きと、浅いボールに対して高い打点でボールと捉えることができるようポジションを素早く上げる動きを習得すること」「守備的な位置から足が長く深いボールを飛ばし、相手を下げるボールを打つこと」に重点を置き、以下を目的としています。

  • 実践を意識し、守備的な位置から長いボールで相手を後ろに下げさせ、相手が短く打ってきたところをコート内に動いて攻撃に転じるというイメージを作る

  • 深いボールに対しオープンスタンスを使って打つことで、体の前にスペースを作ることができるようにし、打点を前で捉えることができるようにする

⑤浅いボールをアタックしネットダッシュからのボレーの練習では、「浅いボールをアタックする時のショットの精度」「オープンコートの相手から遠いところにボレーを落とす」という2点が重要な要素だと考え、この練習も実践をイメージしたドリルとなるよう選手には伝えています。ネットにしっかりつめてのボレー練習なので、ついついボレーを「バシっ」と決めたくなるところですが、丁寧にオープンコートにボールを落とすことを目的として取り組んでもらっています。

これら5つのボール出しでのドリルを通じ、実践で必要な要素を擦り込み、それが自動的にプレーにあらわれるようにしていくことを目指しており、またこれらのドリルを徐々に変化させながらより様々な局面でのプレーに対応できるように今後もアレンジを加えていきます。

練習に取り組む上で重要なこと

結局のところ、世界で勝てるような選手になるには、まず「狙ったところにボールを打てるようになる」ということ(これには「ミスをしないこと」ももちろん含まれます)が最低条件になると考えています。

数年前、ジャパンオープンの会場で友人のJeff Coetzeeと再会しました。当時ダブルス世界No.1ペアであったコロンピアの Farah と Cabal のコーチとして来日していたのですが、練習コートに3人の練習を見に行くと、ちょうどダブルスNo.1ペアの巨人2人をネットに前に立たせ、ペアでのボレー練習をするためJeff がベースラインに立ちストロークを打ち込んでいました。そこで驚いたのはダブルス世界No.1選手のボレーの上手さではなく、Jeff のストロークの精度の高さでした。Jeff は半面をカバーしながら、ネットに立ちはだかる2人を間、横を抜きに行くのですが、びっくりするほど綺麗にウィナーを取っていきます。そのドリルを終えた後、Jeff がコートサイドでその練習を見ていた私のところへ話をしに来てくれたので、「どういう練習を積み重ねると、あのようなプレーができるようになると?」と聞いたところ、「ジュニアの頃から凄い単純な練習を積み重ねてきただけ。ターゲットゾーンを作り、そこへひたすらボールをコントロールするという作業を徹底的にやってきた。ターゲットゾーンにまずは10球連続、そして20球、30球連続でボールをコントロールできるようにし、その後はターゲットゾーンを小さくしながら同じことを繰り返す」とのことでした。もちろんこれが強くなるために必要な全てではないですが、当然狙ったところへ打てる技術が身につけばミスも減り、また自分が思うようにポイントをコントロールできるようになるので、凄く重要な要素であることは間違いないです。

元世界No.1ダブルスペアのFarah、Cabal とJeff(真ん中)。Jeff はジュニア時代、 ITF 世界ジュニアランキングでトップ10、 選手時代はダブルスでオーストラリアンオープンベスト4、世界12位の実績を持つ。現在は南アフリカテニス協会のディレクターとして活躍中


というわけで、エリートチームではどの練習をするにしても常にターゲットを設定し、そこへボールをコントロールすることを徹底し、精度を高めていくことを目指します。

次号ではエリートチームにおける、ポイント練習での取り組みについて書いていきます。

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